暮らすのブログ

小売店勤務アラサー。リアルです。よくお酒を飲みます

モテたい友人

 

ぼくには15年来になる友人がひとりいる。

今日は久々にその友人のことを思い出したので、忘れないようにここに記しておく。

 

人柄はとても真面目。高校を卒業して就職した職場に勤め続けて今年で12年目。離職率の高い職場で彼はベテランの一人に数えられる中堅社員になるそうだ。

 

そんな彼の職場は彼の実家から5分の近場にある。これがコトの一因なのではとぼくは睨んでいるんだけど、そんな立地にある住まい(それも実家)を手放す理由は特に無く、なんと彼は30年間で一度も実家を出たことがない。

困ってないのだ。職場が近い。同棲を計画するような恋人もいない。彼が実家に住まい続けるのはもはや当然の選択肢のようにも思える。

 

高校を卒業してから増えた人間関係は職場の同じ部署に勤める同僚のみ。

その環境にのみ居続けている影響だろうか。高校を卒業してからというもの、この12年間彼はずっと高校生のままなのだ。高校15年生とでも言うか、そんな表現が当てはまってしまうほど『そのまま』だったのだ。

 

社会経験、新しい人間関係による刺激が、12年間も社会人を営んできたとはぼくにはどうしても思えない。それが確信に変わったのは、コロナが流行する前に彼に請われて一緒に街コンに参加した時だった。

 

街コン当日。ぼくは「お洒落してきてよー」と彼に念を押していた。というのも、彼はぼくと食事をしたり遊んだりする時、場所がどこであろうと寝巻きみたいな格好にクロックスで駆けつけてくれるような猛者である。

 

そういう訳でぼくは、とにかく“お洒落“を念押ししていたのだが、果たして彼はお洒落では無かった。

ファッションに対して特に一家言も持っていないぼくから見ても、TPOを語る以前の出で立ちだった。分かりやすく言うと、学生時代にお母さんが買ってきたような感じ(筆記体の英字プリントシャツや裾の裏地がチェック柄のチノパンやデニム)。

 

もちろんその服装それ自体を否定するわけではないんだけど、このシチュエーションでぼくらの年齢の男性がそれを纏うのは違ったのだ。それがお洒落のお題に対して彼が繰り出す答えだったことに、ぼくはかなりショックを受けたのをいまでも覚えている。

 

その日の街コン、結果を言えば散々なものだった。彼はその2時間で知り合った18人の女性と連絡先の交換まで行っておきながら、その後は誰ひとりとして連絡がとれなかった。「自分の中で盛り上がった感触のあった人やもう一度会いたい人に連絡してみたら?」と伝えてこの結果である。

 

そんな予感はしていたんだ。女の子を前にして、彼は急に受け応えがまともに出来なくなっていた。

 

その日の会では、事前に『プロフィールカード』なるものが各々に配られていて、氏名や職業、趣味や将来の夢などなど、自己紹介代わりに記入したその紙を頼りに会話を進められるようになっていた。とても優しい。

 

彼は趣味の欄に『温泉』と書いていて、何人もの女性がそこを拾ってくれた。

女性が想像する温泉は天然温泉や旅館と言った風情あるモノだったのに対して、彼の言う温泉は、スーパー銭湯を指していた。

お陰で会話が噛み合わず「どこの温泉が好きなんですか?(下呂温泉とか草津温泉とか期待してる)」という質問に対して「〇〇の湯(チェーン店の施設名)ですね」と答えており、どのテーブルも沈黙する100%の事故率であった。

 

ぼくがすかさず「(ええい!)それ、スーパー銭湯やないかー!」とピエロになって突っ込んでみても、彼はその意図を察せず「…あ…そうかごめん…」と言いぼくがひとりで大怪我するだけに終わった。ぼくのほうこそ力不足でフォローできなくてごめん。

 

彼はモテたいのだ。恋人が欲しいのだ。

しかしどうすれば。ぼくひとりの手にはとても余るので、15年来の友人その2であるMという男友だちに相談した。

 

Mは熱心な恋愛工学生になっていた。

ルーティンがどうとかスキルがどうとか、使えるかどうかもわからない飛び道具の説明を始めたのでそれ以降相談するのをやめた。

 

そうこうしている間にコロナが流行り、街コンや合コンも催せず、人を紹介もするにもしづらくなって今に至る。

彼とは数週間前に久びさにお茶をしたんだけど、やっぱり高校15年生だし、このままいけば16年生に進級しそうな安定感だった。

 

「コロナが明けたら、また街コン行こうな!」と言われている。彼はいいヤツで、ぼくが力になれるならなりたいけれど…。コロナが明けたら明けたで悩みは増えるのだった。